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活性汚泥法

※本ページは『水浄化フォーラム』より転載しています。
<謝辞>
 「水」の安全確保と環境保全に係る知識と技術を、「水の浄化」に関わる方への参考となるサイトとして『水浄化フォーラム』を執筆・編集・管理いただい
​ ている環境技術学会 村上理事に心より感謝申し上げます。

 

ご注意)以下、標準的な活性汚泥法による排水処理の基本設計・管理についての説明です。
    当社が提供する「KAB」による排水処理では、汚泥が増殖するメカニズムにおいて、その汚泥増殖を抑制するバイオ製剤 
    「KAB」を使用することによって、基本的に余剰汚泥を引き抜かない運用を行います(余剰汚泥に相当する汚泥は生じない
    運用を行います)。従って、下記の理論に基づく設計・管理や事例とは合致しない部分がある点にご留意願います。

 

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1.活性汚泥法とは

 
 生物を用いた水の浄化には、微生物の種類及びその培養法により表1に示すように分類される。
 有機物の分解やその増殖に酸素を必要とする微生物を用いる好気性生物処理と、酸素を必要としない微生物を用いる嫌気性生物処理に分けられる。
 また、適用する微生物を生物反応槽内の水中に懸濁状態で維持する浮遊型処理法と微生物を媒体に付着させて維持する付着型処理法に分けられる。付着型は生物膜法とも呼ばれる。
 好気性生物処理には浮遊型として代表的なものに活性汚泥法、付着型として散水ろ床法、回転円板法、接触曝気法などがある。
 生物処理では、汚濁物質を微生物に摂取させて無害な物質に代謝分解するが、その際に微生物が増殖するため、この増殖した微生物(生物汚泥)の取り出し・処分が必要になる。

表1 生物学的排水処理法.jpg

表1 生物学的排水処理法

 
 下水や産業排水の処理に広く用いられている活性汚泥法の装置を図1に示す。土砂や紙などの異物を除いた排水は最初沈殿池に送られ、固形物質、油分などが除去されて、生物反応槽(曝気槽)に導かれ曝気攪拌下で微生物フロック(活性汚泥)と接触する(滞留時間4~24時間)。
 ここで排水中の有機物は活性汚泥により吸着・摂取・分解される。活性汚泥混合液は、次の最終沈殿池で重力沈降(沈降時間2~3時間)により活性汚泥と処理水とに分離され、処理水は塩素殺菌されて放流される。この活性汚泥処理では排水中のBODは95%以上が除去される。
 一方、活性汚泥の一部は返送汚泥として曝気槽に戻され、残りは余剰汚泥として、最初沈殿池で除去された固形物質(初沈汚泥)ともに系外に排出されて別途に処理・処分される。活性汚泥法を用いた下水処理場では、処理水量の1~2%の混合汚泥が発生している。通常、この混合汚泥は濃縮、消化(嫌気性処理により、有機物の一部をメタンや二酸化炭素へ変換して除去する)、洗浄、脱水、乾燥の後、焼却され、最後に残った灰分は埋立処分される。最近では、混合汚泥の一部は肥料、大部分の焼却灰分は建設資材の原料として有効利用されている。

図1 活性汚泥法による排水処理例.jpg

図1 活性汚泥法による排水処理例

2.活性汚泥法の基本設計・運転管理の項目

 
ここでは、活性汚泥プロセスの設計および操作に係る項目について説明する。
図1に活性汚泥法の模式図
表1に設計・操作因子項目を示す。
なお、濃度の単位[kg/m3] はそのまま[g/L]に置き換えてよい。

図1 活性汚泥プロセスの設計・操作因子.jpg

図1 活性汚泥プロセスの設計・操作因子

表1 活性汚泥プロセスの設計・操作因子.jpg

図1 活性汚泥プロセスの設計・操作因子

SS(Suspended Solid)
 
 SSは水中に懸濁状で存在する非溶解性物質の総称で、その濃度は懸濁液に含まれる汚泥の乾燥重量[mg/L]で表される。活性汚泥法では、SSは
 水を浄化する微生物を意味し、これを活性汚泥(このページでは汚泥と略称する)という。この汚泥には、微生物の他に、流入水由来及び処理
 中に生成した不溶性の無機物などが含まれている。



ML(Mixed Liguor)
 
 曝気槽内において流入水と汚泥の混合液をいう。



MLSS(Mixed Liquor Suspended Solid)
 
 混合液中の汚泥濃度で、単位容積の混合液中の汚泥の乾燥重量[mg-SS/L]で示される。



MLVSS(Mixed Lquor Volatile Solid)
 
 MLSS測定の後、この乾燥汚泥を強熱しその減量からMLVSSの値[mg-VSS/L]を求める。MLVSSは汚泥中の有機物量を意味し、MLSSより
 実際の微生物量に近い値を示す。通常の下水処理場では、MLSSの75~85%を示すことが多い。



返送比 r
 
 返送比 r は、原水流入量(Q i)に対する返送汚泥量(Q r)の比で示される。r は曝気槽内のSS濃度(S a)の制御に重要な項目である。

  r [-] = Q r/Q i ・・・ (1)



SV30(Sludge Volume)
 
 曝気槽内の汚泥混合液1L(1,000mL)をメスシリンダーに入れ、30分間静置したときの沈降汚泥が占める容積V30[mL]の元の汚泥混合液容
 積に対する割合[%]で示す。
 SVI も汚泥の沈降性を示す指標であるが、単位が異なるので注意する。SV30の適正値は20~30%であり、SV30の値が大きくなると沈殿池の
 上澄液量が少なくなり、汚泥の分離効率が低下する。

  SV30 [%]= V30 [mL]/1,000[mL]×100・・・ (2)



SVI(Sludge Volume Index)
 
 汚泥容積指数[mL/g]といい、単位重量当たりの沈降汚泥の容積で示される。活性汚泥の沈降性を示す。SVI は、曝気槽内の汚泥混合液1Lをメ
 スシリンダーに入れ、30分間静置したときの沈降汚泥が占める容積V30[mL]を測り、活性汚泥 1gが占める容積[mL]に換算する。
 正常な活性汚泥のSVI は 50~150の範囲にあり、200を超えると沈殿池での汚泥界面が水面近くまで上がり、汚泥が処理水中に流出するおそ
 れがある。

  SVI [mL/g] = V30 [mL]/Sa [mg/L]×1,000[mL]
         = SV30 [-]×10,000/Sa [mg/L]・・・ (3)



BOD容積負荷 Γv
 
 曝気槽に流入する有機物(BOD換算)量で、曝気槽の単位容積への1日のBOD流入量Γv [kg-BOD/m3/d]で示される。

  Γv= C i×Q i/Va・・・ (4)



BOD汚泥負荷 Γs
 
 曝気槽容積Vaの決定や運転管理の上で重要な設計・操作因子である。曝気槽に流入するBOD量と活性汚泥量(SSa)の比Γs [kg-BOD/kg-
 SS/d]で示される。

  Γs= C i×Q i/Sa/Va・・・ (5)



生成汚泥(余剰汚泥)

 活性汚泥法では微生物が有機物を摂取して増殖し、汚泥が新たに生成する。この生成量を一日当たりの増加量ΔSS [kg-SS/d]で示す。これは
 余剰汚泥として、沈殿池から一部の汚泥(Sr×Qe)を引き抜き、残りの汚泥(Sr×Qr)を曝気槽へ返送して、その活性汚泥濃度Saを一定に保
 つ。
 ΔSSは流入水のBOD濃度、曝気時間、汚泥中の微生物量の割合などによって異なるが、一般的な経験式として(6)式で示される。なお、流入水
 中のS iは考慮していない。(6)式を表1のパラメーターで表すと、(7)式が得られる。

  ΔSS [kg/d]= a×ΔBOD – b×SSa・・・ (6)

 ここで、a [kg-SS/KgBOD]:汚泥変換率、ΔBOD [kg-BOD/d]:除去されたBOD量、b [1/d]、:自己酸化(内生呼吸)の平均速度, SSa
 [kg-SS]:曝気槽内のSS量である。

  ΔSS= a×η×C i×Q i – b×Sa×Va・・・ (7)

 ここで、η [%]:BODの除去率である。
 


酸素消費量
 
 酸素はBODの酸化分解および微生物の内生呼吸で消費されので、一般的には経験式(8)で示される。
 a‘とb‘は流入水の有機物の種類や活性汚泥プロセスの維持管理条件に依存し、SRTによって大きく左右される。図2に、一般的な家庭排水につ
 いて、SRTに対する係数a'[kgO2/kgBOD]とb’[kL-O2/kgSS/d]の値の一例を示す。(参照:係数 a’および b’の測定)

  O2= a‘×ΔBOD + b‘×SSa・・・ (8)

 ここで、O2[kg-O2/d]は一日当たりの酸素消費量である。
 a‘[-]は除去BODの内、微生物(SS)の増殖エネルギー獲得に消費される酸素の割合であり、一般に1よりも小さい。b‘[1/d]は、微生物
 (SS)の内生呼吸に利用される酸素量の割合である。

 

図2 消費酸素推定の係数 a’および b’の例.jpg

図1 活性汚泥プロセスの設計・操作因子

SRT(Sludge Retention Time)
 
 SRTは汚泥滞留時間といわれ、汚泥(SS)が処理系内に滞留している平均日数Ts[d]である。SRTは(9)式で示される。
 一般的に、SSsおよびSSpがSSaに比べて相当少なく、SSoが極めて少ないものとすると、SRTは(10)式で示される。


  SRT= (SSa + SSs + SSp)/(SSe + SSo)・・・ (9)

 
 ここで、SSa [kg]:曝気槽内のSS量、SSs [kg]:沈殿池内のSS量、SSp [kg]:返送配管内のSS量、SSe [kg/d]:1日分の余剰汚泥量ΔSS
 [kg]、SSo [kg]:処理水中の一日分のSS量。

  SRT≒ SSa/SSe
     = Sa×Va/Sr/Qe・・・ (10)

 

HRT(hydraulic Retention Time)
 
 HRTは水理学的滞留時間といい、流入水が処理槽内に滞留している平均的な時間[h]を示す。HRTは施設の設計上、重要な項目である。
 曝気槽滞留時間(曝気時間)HTRaおよび沈殿池滞留時間(沈降時間)HTRsは、それぞれ(11)式および(12)式で示される。


  HRTa= Va/Q i×24・・・ (11)

 
  HTRs= Vs/Q i×24・・・ (12)

 

r と汚泥濃度の関係

 返送汚泥比(r)と曝気槽汚泥濃度(Sa)および返送汚泥濃度(Sr)との関係は、(13)式で示される。この式は次のようにして導かれる。図1

 において、流入水中の汚泥濃度Siおよび処理水中の汚泥濃度Soは、曝気内の汚泥濃度Saに比べてとても低いものとし、曝気槽内の活性汚泥の
 生成(増加)量は余剰汚泥の引き抜きによりSaは一定に保たれているとすると、曝気槽における汚泥の物質収支は(14)式で示される。(14)式
 と(1)式の関係から(13)式が得られる。

  r = Q r/Q i
    ≒ Sa/(Sr – Sa)・・・ (13)

 
  Sr×Q r ≒ Sa(Q i + Q r)・・・ (14)

 

r とSV30との関係

 返送汚泥比(r)と汚泥沈降性(SV30)には、(15)式の関係がある。これは次のようにして導かれる。

 (14)式が成り立つ条件の下で、沈殿池での汚泥の沈降性(濃縮率)がSV30と同じ挙動を示すものとすると、SV30は(Q i + Q r)に対するQ rの
 割合[%]として、(16)式で示される。(16)式と(1)式の関係から(15)式が得られる。

  r ≒ SV30/(100-SV30)・・・ (15)

 
  SV30≒ Q r/(Q i + Q r)×100・・・ (16)

 

3.活性汚泥法の基本設計・運転管理の事例

 
 ここでは、事例として、都市下水で晴天時最大水量20,000m3/d、その平均的なBOD濃度150mg/L(最初沈殿池による処理後の値)として、標準活性汚泥法を適用した処理施設の基本設計・運転管理について、その概要を理解する。なお、この試算ではBOD除去のみを目的とし、窒素およびりんについては考慮しない。

曝気槽の容積
 
 容積負荷(Γv)を0.60 kg-BOD/m3/dとすると、(4)式より曝気槽容積(Va)を求める

  Va = C i×Q i/Γv
     = 150[g-BOD/m3]×20,000[m3/d]/0.60[kg-BOD]/1,000[g/kg]
     = 5,000[m3]



曝気槽内汚泥濃度
 
 汚泥負荷を0.40 kg-BOD/kg-SS/dとすると、(5)式より曝気槽内のMLSS濃度(Sa)を求める。

  Sa = C i×Q i/Va/Γs
     = 150[g-BOD/m3]×20,000[m3/d]/5,000[m3]/0.4[kg-BOB/kg-SS/d]
     = 1,500[g-SS/m3 = mg-SS/L]



SV30の調整
 
 SV30を30%に調整するための返送比および返送量を、(15)式および(1)式より求める。

  r = 30/(100-30) = 0.42 → Q r = r×Q i
    = 0.42×20,000[m3/d]
    = 8,400m[m3/d]



SVI
 
 SVIは、(3)式より求める。

  SVI = SV30[-]×10,000/Sa[mg-SS/L]
    = 30[-]×10,000/1,500[mg-SS/L]
    = 200[mL/g-SS]



曝気時間
 
 曝気時間(HRTa)は、(11)式より求める。

  HRTa = Q i/Va×24
      = 5,000[m3]/20,000[m3/d]×24[h/d]
      = 6[h]



余剰汚泥とSRT
 
 流入水中のSSは微生物の増殖量に比べて相当少ない条件では、曝気槽中の汚泥増加量ΔSSは(7)式から計算できる。BOD除去率90%とする 
 と、

  ΔSS = 0.73[kg-SS/kg-BOD]×0.90[-]×150[g-BOD/m3]×20,000[m3/d]/1,000[g/kg] – 0.075[1/d]×1,500[g-
      S/m3]×5,000[m3]/1,000[g/kg] = 1,400[kg-SS/d].

 曝気槽内の汚泥濃度を一定に保つため、汚泥増殖量ΔSSに等しい余剰汚泥量SSeとして、最終沈殿池からの返送汚泥の一部を引く抜く汚泥量
 Qeに換算する。(14)式から返送汚泥濃度S rを求め、引き抜き汚泥量Qeに変換する。

  S r = Sa×Q r/(Q i + Q r)
     = 1,500[gSS/m3]×(20,000[m3]+8,400[m3])/8,400[m3]
     = 5,100[gSS/m3]

 
  Qe = ΔSS/S r
     = 2,800[kgSS/d]/5.100[gSS/m3]×1,000[g/kg]
     = 550[m3/d]


 SRTは(9)式より求めると、

  SRT ≒ SSa/SSe = Sa×Va/S r/Q e
      = 1,500[gSS/m3]×5,000[m3]/5,100[gSS/m3]/550[m3/d]
      = 5.3[d].



必要酸素量
 
 図2により、SRT=5.3 [d] におけるa‘=0.51[kgO2/kgBOD]およびb‘=0.098[kL-O2/kgSS/d]を適用すると、(8)式より求める。

  O2 = 0.51[kg-O2/kg-BOD]×0.9[-]×150[g-BOD/m3]×20,000[m3/d]/1,000[g/kg]
     + 0.098[kL-O2/kg-SS/d]×32[g/mol]/22.4[L/mol]x1,500[g-SS/m3]×5,000[m3]/1,000[g/kg]
    = 2,400[kg-O2/d]

 

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